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いわゆる「マニュアル敬語」

敬語について議論される中で,いわゆる「マニュアル敬語」がしばしば批判的に取り上げられる。ここで言うマニュアルとは,職場での言語使用,特に接客の場面での言語使用について具体的な言語表現などを示すもので,新入職員や臨時職員の指導に用いられるものを指す。また「マニュアル敬語」への批判とは,マニュアルの中での敬語の示し方,更にそのマニュアルに過度なまでに従った敬語使用への批判である。
本指針案は,このことについての留意事項を二つの方向から指摘する。
第一は,マニュアルが場面ごとに過度に画一的な敬語使用を示す内容で作られ,実際の接客場面での言葉遣いに行き過ぎた制約になるのを避ける必要があるということである。いつでも,どんな相手にでも,限られた言語表現だけを画一的に使うことは,相手,例えば,顧客にかえって不快な思いを与えたり,その場にそぐわない過不足のある敬語使用になったりすることにつながりやすい。
この点については,マニュアルによって敬語の使い方を指導する場合にも,また敬語の使い方を習得する場合にも,そこに示された内容を唯一絶対のものとして扱うことを避ける態度が必要である。マニュアルに掲げたもの以外の言語表現を用いることを許さないような指導や規制,あるいは,いつでも,どんな相手にでもマニュアルに示された言語表現だけで事は足りるとするような受け止め方,これらはどちらも,本指針案の目指す「自己表現」という敬語使用の基本姿勢とは相いれないものである。
第二に,以上のような事柄を踏まえた上で,マニュアルというもの自体が,敬語にまだ習熟していない人,特に,その職場に特有の言語場面での敬語にまだ不慣れな人のためには有効なものであるということも指摘したい。敬語の使い方には,相手や場に応じた幾つかの典型例や型があり,職場などごとに用意されるマニュアルは,そうした典型例や型を示すことによって,まだ習熟していない人への手引として有効なものとなり得る。その意味で,マニュアルは,今後とも,それぞれの分野や職場で適切な内容で作成されることが必要となろう。
以上の事柄は,職場での社員指導のために作られるマニュアルについての指摘である。これとは別に,より広い範囲の読者や利用者を想定して作成・公刊される敬語の解説書や手引についても,以下の事柄を指摘しておく。
敬語の解説書や手引には,敬語の使い方にまだ習熟していない人のために,敬語の仕組みや敬語を用いる際の心遣いの在り方などとともに,場面に即した敬語の使用例を具体的に示すことが欠かせない。そうした具体例を示す際には「自己表現」として選ぶべき多様な敬語や言語表現を示し,その習得や実践を動機付けるような内容を期待したい。例えば,一つの場面について,相手や状況に応じた複数の言語表現を例示した手引,そうした複数の表現例の中から最適と思われるものを選ぶ際の考え方についての解説,あるいは例示する言葉遣いに加えて,その場にふさわしい別の敬語や言語表現を工夫することを求める解説などが考えられよう。

このページは、文化庁文化審議会の答申「敬語の指針(PDF)」を基に作成しています。

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・依頼文 ・依頼、勧誘を断る返事 ・催促、苦情、抗議等の通知 ・詫び状 ・照会、お問い合わせなど

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