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尊敬語・謙譲語Ⅰの働きに関する留意点
敬語のうち尊敬語と謙譲語Ⅰは,先に見たように,ある人物を「立てて」述べる敬語である。すなわち,尊敬語は「相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて,その人物を立てて述べる」敬語であり,謙譲語Ⅰは「相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先を立てて述べる」敬語である。 実際の場面で尊敬語や謙譲語Ⅰを使って人物を「立てて」述べようとする場合に留意すべき主な点は,次のとおりである。 (1)自分側は立てない。 (2)相手側を立てて述べるのが,典型的な使い方である。 (3)ア第三者については,その人物や場面などを総合的に判断して,立てる方がふさわしい場合は,立てる。
自分から見れば,立てるのがふさわしいように見えても,「相手から見れば,立てる対象とは認識されないだろう」と思われる第三者については,立てない配慮が必要である。
【解説1:(1)について】 (1)の「自分側」には,「自分」だけではなく,例えば「自分の家族」のように,「自分にとって「ウチ」と認識すべき人物」も含めてとらえるものとする。 (1)は,例えば,他人と話す場合に「父は来週海外へいらっしゃいます。」などと述べるのは適切ではないということである。尊敬語「いらっしゃる」によって,自分側の「父」を立てることになるからである。「明日父のところに伺います。」と述べる場合も,謙譲語Ⅰの「伺う」が<向かう先>を立てる働きを持つため,やはり自分側の「父」を立てることになり,これも不適切な使い方である。 このように,「自分側は立てない」というのが,尊敬語や謙譲語Ⅰを使う場合の基本的な原則である。自分側のことについて述べる場合は,自分側を「立てる」結果になるような敬語は使わず,上記の例で言えば,それぞれ「父は来週海外へ行きます。」「明日父のところに行きます。」のように述べるのが一般的な述べ方である。 ただし,自分側のことを述べるために使うふさわしい敬語(謙譲語Ⅱ)が別にある場合には,これを使うと,相手に対する丁重な述べ方になる。上記の例で言えば,「父は来週海外へ参ります。」「明日父のところに参ります。」が,それに当たる述べ方である。
【解説2:(2)について】 (2)の「相手側」には,「相手」だけではなく,例えば「相手の家族」のように,「相手にとって「ウチ」と認識される人物」も含めてとらえるものとする。 (2)は,例えば「先生」やその家族と話す場合に,「先生は来週海外にいらっしゃるんでしたね。」あるいは「先生のところに伺いたいんですが……。」などと述べれば,相手側を立てることになり,このような使い方が尊敬語や謙譲語Ⅰの典型的な使い方である,ということである。初めの例は,尊敬語によって<行為者>である「先生」を立てる例,後の例は,謙譲語Ⅰによって<向かう先>である「先生」を立てる例である。 人物や状況によっては,相手側を立てずに述べてもよい場合や,立てずに述べる方が親しみを出すことができるような場合ももちろんあるが,立てようとする場合の手段として,尊敬語や謙譲語Ⅰがあるわけである。このように相手側を立てて述べるのが,尊敬語や謙譲語Ⅰの最も典型的な使い方である。
【解説3:(3)について】 【(3)アについて】 例えば,「先生」やその家族と話すわけではなく,友人と話す場合にも,「先生は来週海外にいらっしゃるんでしたね。」「先生のところに伺いたいんですが……。」などと,「先生」を立てて述べることがある。この場合の「先生」は,「相手側」ではなく「第三者」であるが,その人物や場面などを総合的に判断して「立てる方がふさわしい」ととらえられているわけである。 (3)アは,このような場合を述べたものである。尊敬語や謙譲語Ⅰは,このように第三者を立てる場合にも使われる。
【(3)イについて】 上述の例の友人が,例えば,同じ「先生」の下で,一緒に学んだことがある友人なら,一般に,上述の例のように「先生」を立てた述べ方を聞いても,違和感を持たないであろう。しかし,例えば,その友人の全く知らない人物で,自分だけが知っている人物のことを話題にする場合に,「昨日,高校の時の先輩が遊びにいらっしゃったんですけどね,……。」などと立てて述べるとすると,聞いた友人は,自分の全く知らない人物を立てられることになり,ある種の違和感を持つ可能性がある。 このように,自分から見れば,立てるのがふさわしいように見えても,「相手から見れば,立てる対象とは認識されないだろう」と思われる第三者については,立てずに,この例で言えば,「昨日,高校の時の先輩が遊びに来たんですけどね,……。」と述べる方が適切である。(3)イは,このことを述べたものである。
(注)
なお,例えば,上司のことを,更にその上司に述べる(例えば,課員が課長のことを部長に述べる) ような場合には,次の①②の二通りの考え方ができる。①は,上記(3)イに従った考え方であり,②は,これとはまた別の原理に従った考え方である。
①
部長から見れば,課長は,立てる対象とは認識されないであろうから,課長を立てずに述べるのがよいとする考え方 ②
部長から見れば,課長は,立てる対象とは認識されないであろうが,課員が課長を立てれば,それによって更に上の部長を立てることにもなるはずなので,課長を立ててよいとする考え方 どちらの考え方にも,理があると言える。どちらを採るのがより適切かは,この三者(部長と課長と課員)の間の距離感や,状況などによっても変わってくると考えられる。 こうした点も含めて,(3)イをどこまで適用するかについては,個人差もあるようである。
このページは、文化庁文化審議会の答申「敬語の指針(PDF)」を基に作成しています。
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手紙・挨拶文の文例その② ・依頼文 ・依頼、勧誘を断る返事 ・催促、苦情、抗議等の通知 ・詫び状 ・照会、お問い合わせなど
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