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謙譲語Ⅱ(丁重語)に関する問題
【13】加藤先生に向かって,もう一人の恩師である田中先生のことを話題にして「明日は,田中先生のところに参ります。」と言った。田中先生を十分に高める気持ちで言ったのだが,これで良かったのだろうか。
【解説1】「参る」は謙譲語Ⅱである。つまり相手に対して改まって伝えるための敬語であって,話の中に出てくる第三者を立てるための敬語ではない。したがって,この言い方では,田中先生を立てることはできない。田中先生を立てるのであれば,「田中先生のところに伺います。」と言えば良い。「伺う」は謙譲語Ⅰであり,<向かう先>の人を立てることができるからである。
【解説2】「明日は,田中先生のところに参ります。」と言ったとき,「参る」という敬語を使えば,第三者である「田中先生」を立てる気持ちが表現できると感じている人も多いようである。もちろん,「田中先生」を相手にして「田中先生のところに参ります。」と言えば,相手である田中先生に対して丁重に述べることになるため,結果として田中先生に敬意を示すことになる。このような使い方との関連から,加藤先生を相手に述べたとしても,田中先生を立てているように感じられるのだろう。 しかし,例えば,「田中先生」を「弟」に入れ替えて,「弟のところに参ります。」と言ったとき,「弟」を立てていると感じる人はいないだろう。仮に「参る」が話の中に出てくる第三者を立てる敬語だとすれば,自分の「弟」には使うことができないはずである。ところが,「弟のところに伺います。」は,明らかな誤用であるのに対して,「弟のところに参ります。」は問題のない敬語の使い方である。「参る」は,あくまでも「加藤先生」に対して丁重に述べる敬語として働いているのであって,話の中に出てくる第三者である「弟」を立てる働きはないのである。 したがって,同様に,第三者である「田中先生」も立てる働きはないと言えるわけである。
以上述べたことを整理すると次のようになる。(いずれも,相手は加藤先生。) ①田中先生のところに参ります。→加藤先生に対して丁重に述べたもので,田中先生を立てているわけではない。 ②弟のところに参ります。→加藤先生に対して丁重に述べたもので,自分の弟を立てて述べているわけではない。全く問題のない用法。 ③田中先生のところに伺います。→田中先生を立てて述べたもの。 ④弟のところに伺います。→自分の弟を立てて述べることになるため,誤用となる。
【14】「御持参ください」,「お申し出ください」,「お申し込みください」などといった言い方には,「参る」や「申す」など,本来自分に使う敬語が入っているのでいつも気になっている。これらは,適切な使い方なのだろうか。
【解説1】「参る」や「申す」は,謙譲語Ⅱに当たる敬語である。しかし,「御持参ください」,「お申し出ください」,「お申し込みください」などといった表現の中に含まれる「参る」や「申す」は,謙譲語Ⅱとしての働きは持っていないと言ってよい。したがって,これらの表現を「相手側」の行為に用いるのは問題ない。
【解説2】「御持参ください」「お申し出ください」という表現が気になる場合には,「お持ちください」「おっしゃってください」などと言い換えれば良い。「お申し込みください」は,状況によっては「御応募ください」などに代えることができる。
【15】社長から,課長である私が,部下に企画をもっと積極的に出せと指示しておくように言われた。「はい,そのように申し伝えておきます。」と返事をしたのだが,これでは部下を高めることになってしまうのだろうか。
【解説】「申し伝えておく」というのは,「そのように部下に言っておく」あるいは「そのように部下に伝えておく」ということを,「申す(謙譲語Ⅱ)」という敬語を使って表現したものである。つまり,ここでは,「相手」である社長に対して改まって述べたものであって,その<向かう先>である「部下」を立てるものではない。したがって,問題のない使い方である。
このページは、文化庁文化審議会の答申「敬語の指針(PDF)」を基に作成しています。
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