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依頼の仕方の問題

【31】同僚に仕事を頼む時に,自分が責任者ではなかったが,「この仕事をしていただきます。」と言ったら,きつい言い方だと言われてしまった。敬語を使っているから良いと思っていたのだが,どう言えば良かったのだろうか。

【解説1】自分が責任者でない場合には,「この仕事をしていただきます。」のように自分が決定権を持っているような表現ではなく,「この仕事をしていただけますか。」など相手に判断をゆだねるような表現を用いる方が良いだろう。ほかにも,「これお願いできますか。」「お願いしてもいいですか。」などの表現を用いることで,きつい言い方だという印象を持たれずに済むだろう。

【解説2】複数の人たちで仕事をしているとき,その仕事の方針や方向などを決めるのがだれか,ということは,言語表現を選択するためにも大切な要素となる。明らかに決定権を持っている人はそれを打ち出してよいのだが,その場合でも,自分が決めるから他の者は従えという態度を取ったり,そのように表現したりすることは,丁寧さを欠くことになる。決定権がある場合にも,すべてを自分が決めてしまうのではなく,相手や第三者の意思も尊重する,という姿勢を示した表現の方が丁寧になる。
特に,決定権のない人が決定権を持っているように振る舞うことには問題がある。
例えば,「はい,次に進みましょう。」と進行に関する発言をその会のリーダーや司会以外の人が言うと失礼になる。仕事以外でも,例えば,「どうぞ,召し上がってください。」と勧めることを,招待された客が口にするのは配慮に欠けた行為である。
なお,決定権を持つことができるのは,必ずしも常に上位者であるとは限らない。
その場合,決定権を持たない上位者は,決定権を持つ下位者に対して配慮する必要があるが,一方で,決定権を持つ下位者から決定権を持たない上位者への配慮も同時に必要である。

【32】同僚から突然「これ,お願いします。」と書類を置いていかれた時,何だか失礼な頼み方だと感じた。何が問題だったのだろうか。

【解説】これは,何の前置きもなく,突然頼むという点が,行動の点でも,言語表現の点でも問題であったと言えよう。もちろん,いつも仕事を依頼し合っているような関係であれば,「これ,お願いします。」で十分な場合もある。しかし,何かを頼むということは,相手には負担の掛かることだと考えられる。相手に負担を掛けているのだ,という意識を持って,その気持ちを表明することが,相手に対してより配慮した表現になると言えるだろう。
この場合は,「すみませんが」や「忙しいところ申し訳ないけど」などの前置きの表現があるだけで,随分印象が違ってくる。また,依頼することが当然であるかのように受け取られる「お願いします。」という言い方よりも,「これ,お願いできますか。」「お願いしてもいいですか。」などの婉曲的な表現を使った方が相手に対する配慮を確実に表すことができると言えよう。

【33】「それ,取ってもらってもいい(ですか)。」「こちらの書類に書いていただいてもよろしいですか。」というような言い方をよく耳にする。「取ってちょうだい。」や「取ってください。」,「書いていただけますか。」に比べると,何だか回りくどい言い方に聞こえてしまう。こうした表現について
は,どう考えれば良いのだろうか。

【解説1】基本的に「~てもいい(ですか)」「~てもよろしいですか」などは,自分のすることについて,相手の許可を求める言い方である。しかし,「取ってもらってもいい(ですか)。」という表現は自分が取るのではなく,相手が取ることを要求しているものである。したがって,「取ってちょうだい。」や「取ってください。」という依頼や指示の表現と同じ内容を表すものである。そのように,本来なら依頼や指示の表現で済むところを,許可を求める表現に変えているということになり,その分だけ,「回りくどい」印象を与えるのだと言える。
指示や依頼が簡潔にできる状況であれば,こうした回りくどい印象を与える表現は用いない方が良いだろう。

【解説2】このような,依頼や指示を「許可を求める形」で行う表現は近年よく耳にするようになった。なぜ,このような回りくどい言い方をわざわざするのだろうか。
例えば,「取ってちょうだい。」「取ってください。」といった表現は,相手に直接働き掛けているものである。それに対して,「取ってもらってもいい(ですか)。」という表現は,(自分が)取ってもらえるかどうかを尋ねる形に変わっているのである。
そうすることで,相手に対して押し付けるような印象をなくし,相手への配慮を表そうとするのではないかと考えられる。これが,回りくどい,言い換えれば,婉曲的な表現をしようとする主たる理由であろう。
これは,「~てもよろしいですか。」についても同様である。「書いていただいてもよろしいですか。」も,「書いていただけますか。」という依頼の敬語表現と伝えたいことは同じ内容だと言えるが,相手に許可を求める表現に変えることで,より丁寧な言い方にしようとしたのだと考えられる。

このページは、文化庁文化審議会の答申「敬語の指針(PDF)」を基に作成しています。

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手紙・挨拶文の文例その①
・贈答の手紙 ・お祝いの手紙 ・お礼状 ・お見舞い状とその返事 ・案内、招待、勧誘の手紙 ・通知、挨拶の手紙 ・年賀状、寒中見舞い、残暑見舞い、クリスマスカードなど

手紙・挨拶文の文例その②
・依頼文 ・依頼、勧誘を断る返事 ・催促、苦情、抗議等の通知 ・詫び状 ・照会、お問い合わせなど

手紙・挨拶文の文例その③
・結婚に関する手紙、縁談の申込、断り方 ・葬儀に関する手紙、喪中欠礼など


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